皆ゾロゾロとかき氷の売り場の周りに集まってきた。私は篠田の近くに歩み寄りママさんにコックリと頭を下げた。ママさんは、きょうもやはり大人しい女の子に寄り添うように植え込みの縁に座っていた。
「聞いてるよ、二人で色々やってくれたんやね、ようけ集まってくれておおきに」
私は篠田の顔を横目でちろっと見た。言わぬでも良いのにママさんに手柄話をしたようだ。篠田はえっへっへと頭を掻いた。
女子たちの中にはとっくに食べている者や既に食べ終わった者も居る気配だった。
私は篠田に小声で訊いた。
「いくつ売れたんや」
「五つくらいやな」
しかし氷はまだたっぷりある。これが溶けぬうちに売ってしまわねば。
篠田はこことばかり声を張り上げた。
「きょうはええ試合やったがな。皆ご苦労さんや、仕上げにかき氷どうでっか」
萩野が小馬鹿にしたように笑った。
「なんやお前、副審が仕事もせんでかき氷売りになったんか」
篠田はえへへと笑うが、ママさんがちょっとばかり申し訳なさそうな顔をした。いえいえ、そうじゃないです--とばかり萩野も思い切り笑う。
「せっかくやから僕らも食べよか、作ってもらえますか」
ええよええよとママさんは頷く。
「いくらやのん」
篠田が弾けるように答えた。
「大きいのが十円、小さいのが五円や」
「お前はええねん」
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