嫁は以後顔を見せなくなった。このことでなにやらあるかと思ったが、特になかった。さすがにいきなりのあからさまはできなかったのだろう。
専務は机に座っていることが多くあまり仕事場に姿を見せない。そこで何をやっているのか、元々仕事らしい仕事をしていないのだが、その方が良かった。顔を見るだけでうんざりしてしまうので、それを見ることのない日は婆さんが煩いにしても一応平和だった。
赤木さんは黙って材料の切りだしをやっていて山ちゃんは組み立ての準備をしている。準備と言ったって何ほどのことはないのでこの段階では幸平は概ね赤木さんを手伝っている。仕事の最中は機械の稼働音がうるさいので大声を出さねばならないしそもそもあまり話すことはないが、たまにタイミングで世間話をふっても「あー」とか「うー」が返ってくるだけで普通の話にならない。休み時間であっても一般的な会話はあまり成立しない。そこだけをみると赤木さんは明らかに愚鈍だ。
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