雨霞 あめがすみ

過去に書き溜めたものを小説にするでもなくストーリーを纏めるでもなく公開します。

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

水色の日傘 14

いよいよ遂にその時がきた。 私は学校から戻って昼食もそこそこに、家にようやく一本ある古びた兄のバットを持って公園に駆け出した。 マネージャーの最も大事な役割は場所取りだ。もし誰かに先んじられていたら、その連中が試合を終えるまで待たねばならな…

水色の日傘 13

井筒は投げても凄いのだった。右投げ左打ち。それでけでも小学生とは思えないが、ストレートも伸びるしカーブもちゃんと曲がって見える。 現在の少年野球では変化球は禁止のようだが、当時は近所に少年野球チームなどなかった。あるのはクラス単位でできる草…

水色の日傘 12

篠田が声をかけてきた。「チーム、どんな具合や」 「空き地で練習してるがな、結構気合入ってるで」 「そうかいな、結構なこっちゃ」 篠田ははははと笑った。聞けば三組は全然練習していないという。 「大丈夫なんかそれで」 「ええんや別に、ムキになってる…

水色の日傘 11

誰も知らなかったが、井筒には四つか五つ違いの兄がいて、これが甲子園も望める有力高校の選手だった。 教え魔で、しょっちゅう高校の練習グランドへ井筒を連れ出して教えまくった。それが結構厳しく時には泣かされるので井筒は上手くはなったが野球にはすっ…